「鶯谷の恋人は
とてもいい声をしていた」
そういうとだれもが
おかしそうな顔をする

「春になるとよく
歌を歌ってくれたものだ」
そういうとだれもが
飲んでいたお茶などを噴出す

正面からお茶などを浴びた私は
ハンカチで顔を拭きながら
それでも恋の話を
政治家のように喋り続ける

他人の恋の話ほど
退屈なものはないと知っている
けれど恋はいつもどこかで
誰かに笑われるのを
待っているような気がする


(鶯谷の恋人)
c X-YELLOW 1996-2005