初詣の帰り
伝法院通りを歩いていたら
大黒屋の行列の中に
二十面相を見つけた

寒風に翻る
マントの裏地は
時代錯誤な
あの赤のまま
老人になった
二十面相は
前よりずっと
怪人になっていた

老いさらばえた
その横顔は
春の月のように
不思議にあかるく
杖を握った
手袋の
純白でないのが
色っぽいほどだった
進行方向は
どちらであっても
歳をとるということは
やはり進化なのだと思った

「明智よりも
長生きするに違いない」

天ぷらの順番を
じっと待っている
曲がった背中を見ながら
確信した


(浮世)
c X-YELLOW 1996-2005